SmartHRのターゲット/プライシングの変遷から考えるPMFとグロース

PMFからグロース調査:SmartHR

toB向けホリゾンタルSaaSのSmartHRがシリーズD156億円を調達し、未公開企業で時価総額1,731億円になりました。そこで2015年からスタートしたSmartHRが”ターゲットユーザー”と”機能”をどのように変化することでPMF達成からグロースまで至ったのか追います。

SmartHRのターゲットと単価の変化
  1. 企業規模変化:2018年5月から3年後でエンタープライズ割合が23.3%増
  2. 料金表示(従業員50名以下):2020年から非表示へ
  3. 料金表示(従業員50名より大):2017年から非表示へ
  4. 平均単価:2019年より平均78.2%増
  5. ARR:サービス開始2年で1億円超え、5年で20億円超え
導入企業数の推移

※無料利用、有料利用企業の合算

※2021年は前年の成長率を維持と仮定

ARRの推移

※2016年12月以前は売上表示

ARPU(平均単価)の推移

※ARRを無料利用と有料利用企業の合算で割って計算

【2015年2月】サービスリリース前

サービスリリース前のSmartHRのホームページ

メールアドレスを取得するのみのトップページです。「ベンチャー・中小企業の経営者」という文から初期ターゲットがわかります。この頃、2万円のFacebook広告が2週間で125件のメールアドレス獲得へ繋がったとインタビューでにあります。

【2015年10月】正式版リリース直前

2015年10月のSmartHR Top

無料でDemo版リクエストが開始しています。このときのDemo版で提供していた機能は下記です。

  • 退職の手続き
  • 扶養の追加・削除
  • 給与改定・月変の手続き
  • 従業員の引越し
  • 関東ITSに対応
  • 書類の印刷代行

そして、翌月の2015年11月18日に正式版がリリースします。

【2016年3月】正式版後

2016年3月のSmartHR Top

正式版がリリースされました。

この2016年にPR TIMESで発表された追加機能です。

  • 3月3日:電子政府 APIを利用した役所へのオンライン申請機能を公開
  • 5月25日:APIを公開。マネーフォワード社、ソネット社等とシステム連携を開始
  • 6月21日:「算定基礎・年度更新」機能の提供を開始。役所への電子申請や、オンラインバンキングを介した保険料の電子納付まで可能に
  • 9月12日:「¥0プラン」の提供を開始
  • 9月26日:社労士向け機能「SmartHR for Adviser」を提供開始
  • 10月17日:「ペーパーレス年末調整機能」を公開
  • 11月8日:API連携により「Talentio」の内定者情報をワンクリックで「SmartHR」に送信可能に

また、このときのSmartHRの価格帯です。

2016年3月のSmartHR 料金プラン_年間一括払い
SmarfHR201603_Price_month
2016年3月のSmartHR 料金プラン_月々払い

従業員数に応じた年間一括払いと月額払いの2種類が用意されていました。月額払いは年間一括払いよりも月々の料金は20%高くなる設計です。

また、51名以上の従業員は月額500円(税抜)/人が加算されます。

2016年末の予測数値です。

  • ARR:3,000万円
  • 導入企業数:2997社
  • 平均月額単価/社:792円

導入企業数には無料と有料企業が含まれ、無料割合が20%だと仮定すると平均単価/社は913円になり、初期顧客は5名以下の小規模企業がメインの利用者だったと予測します。

そして2016年からセキュリティへの取り組みは進められています。

  • 機密情報を暗号化して保存
  • 1企業1データベース
  • 二段階認証設定
  • SSL通信
  • ISO 27001(ISMS)申請中

上記の取り組みが労務分野のSaaSサービスを提供する上でクライアントのニーズとして求められており、エンタープライズへ進む上で大事になってきます。 

また、2016年にシリーズAで5億円の資金調達を実施します。ARRマルチプルは約200倍とのことです。

この年の資金で翌年に初のTVCMを開始します。

単価がそんなに高くない、対象顧客が多い、チャーンレートが低いっていうジャンルだとめちゃくちゃ先行逃げ切り型の市場になるんですよね。対象顧客が多いので、ある程度お客さんが勝手に製品を選んでくれたり、勝手に使い始められるくらい良いプロダクトじゃないといけないんですよ。なので良いプロダクトを作ることに先行投資し、それをいち早く広めるためにマーケティングにも突っ込むっていうのが合ってるビジネスなんですね。

スタタイ

【2017年10月】無料プラン掲載開始

2017年10月のSmartHR Top

サービスのタグラインが変更されました。

  • 2017年9月以前:すべての『労務』を1クリックで
  • 2017年10月時点:クラウドで1クリック人事・労務

2017年にPR TIMESで発表された追加機能をみてみました。

  • 7月4日:「算定基礎届」の電子申請機能公開
  • 8月4日:「MFクラウド給与」との連携範囲を拡大 〜社会保険・雇用保険の手続きにも必要な給与データの一括取得が実現〜
  • 8月18日:TV CMスタート
  • 11月14日:株式会社SmartHRの社外アドバイザーに米国・Fond,Incの福山太郎氏が就任
  • 12月13日:「SmartHR」から勤怠クラウドサービス「CLOUZA」へワンクリックで従業員情報の登録が可能に

また、料金プランでは無料プランが追加され、51名以上の利用の場合は見積もりとなっています。

2017年5月のSmartHR 料金プラン_年間一括払い

サービス開始2年でtoB向けの業務サービスをテックタッチで提供開始し、TVCMで導入障壁を下げながら間口を広げていきます。

テックタッチとは
多くの顧客に対して人の手を介さずにテクノロジーメインで導入対応をすること。

2017年末の予測数値です。

  • ARR:1.8億円(前年同期比532%)
  • 導入企業数:7500社
  • 平均月額単価/社:2,000円(前年同期比152%)

導入企業数には無料と有料企業が含まれ、無料割合が20%だと仮定すると平均単価/社は2,500円になり、初期顧客は5名以下の小規模企業がメインの利用者だったと予測します。

【2018年12月】プラットフォーム化構想発表

2018年12月のSmartHR Top

ここでもサービスのタグラインが変更されました。

  • 2017年9月以前:すべての『労務』を1クリックで
  • 2018年11月以前:クラウドで1クリック人事・労務
  • 2018年12月時点:人事・労務をラクラクに

2018年にPR TIMESで発表された追加機能をみてみました。

  • 8月1日:「雇用契約締結機能」を公開。雇用契約の締結から入社手続きまで一貫したオンライン化を実現
  • 9月13日:プラットフォーム化構想を発表
  • 10月15日:CMスタート。速水もこみちさんが年末調整の「時短レシピ」を披露
  • 10月24日:従業員情報収集アプリを公開。PC・スマートフォン不要で従業員の情報登録が可能に

2018年末の予測数値です。

  • ARR:4.5億円(前年同期比150%)
  • 導入企業数:18,891社
  • 平均月額単価/社:1,985円(前年同期比-0.7%)

【2019年7月】料金表示は2種類へ

2019年7月のSmartHR 料金体系_大~中規模企業
2019年7月のSmartHR 料金体系_小規模企業

料金プランの表示が5つから2つに変更になりました。無料プランは継続して掲載されており、1 – 50名の従業員利用の場合は一人あたりの値段表示へ変更となりました。

2019年にPR TIMESで発表された追加機能をみてみました。

  • 1月8日:採用管理システム「ジョブスイート」が連携を開始。内定から入社手続きがペーパーレスへ
  • 1月21日:「人事労務freee」が相互の強みを生かした連携を開始。労務管理と給与計算をよりシームレスに
  • 4月10日:顔がわかる「カスタム社員名簿」を公開し、組織マネジメントや社内コミュニケーションの課題解決へ
  • 9月2日:「ラクラク分析レポート」機能を公開。働き方改革や戦略人事に向けた、人事データ活用の第一歩を後押し
  • 10月15日:WOVN.io と連携し、5ヶ国語の「多言語化機能」提供開始
  • ※多くの外部サービスとAPI連携実施

2019年末の予測数値です。

  • ARR:9.0億円(前年同期比100%)
  • 導入企業数:26,000社
  • 平均月額単価/社:2,885円(前年同期比45.3%)

・・・加筆中・・・