PLAID(プレイド)運営KARTEのターゲット/プライシングの変遷から考えるPMFとグロース

株式会社PLAIDのPMFからグロースまで

toB向けホリゾンタルSaaSのPLAIDが運営するKARTEリリース当時から上場までに”ターゲットユーザー”と”機能”をどのように変化することでPMF達成からグロース、そして上場まで至ったのか追いました。

Image from Gyazo
KARTEのターゲットと単価の変化
  1. ターゲット:2014年リリースから2.5年後にエンタープライズへ
  2. 料金表示:2018年から料金を非表示へ
  3. 平均単価:2017年より毎年37.6%上昇
  4. ARR:サービス開始4年で3.0億円、6年で16.0億円
  5. 上場までの調達額:49.7億円
KARTEポジショニングの変化
KARTEの1社あたりの平均単価推移

※2015年のARPUは2016 – 2017年の契約社数成長率から逆算した推測

※ARR売上高:各期末の月次サブスクリプション売上高を12倍して算出

【2014年5月】サービスリリース前

KARTE 2014年5月時点のトップページ

メールアドレスを取得するのみのトップページからECサイト運用者向けの「相手の状況にあわせた接客」サービスをスタートしました。その2ヶ月後にシリーズAで1.5億円の資金調達を実施します。

リアルタイム解析により新たな「ウェブ接客」を実現するプレイド、フェムトグロースキャピタル他より1.5億円を調達

PR TIMES

この時、時価総額(Post Value)は8億円で2014年当時の売上高マルチプルはx90倍以上だと予測。

【2015年3月】正式リリース:トップページに料金表示開始

KARTE 2015年8月時点の料金表示

β版リリースから10ヶ月。3タイプのプランが用意され、ベーシックプランは月額5,000円から利用可能でした。また、1接客あたり1円の課金もされています。

また、導入のハードルを下げるために14日間のトライアルが用意されています。

  • 3月12日 正式版リリース
  • 5月18日 ECサイト構築プラットフォーム「FutureShop2」と連携開始
  • 5月20日 CCI社と共同でLINE ビジネスコネクトに対応したカスタマーサポート支援ツール「CLINE by KARTE」を提供開始
  • 6月16日 GMOペパボ「カラーミーショップ」を連携開始
  • 8月19日 「DeNAショッピング」「auショッピングモール」で利用可能に
  • 9月9日 クラウドコマースソリューション「えびすマート」と連携開始
  • 9月10日 ネットショップ構築サービス「MakeShop」と連携開始

リリースされている機能をみると、EC向けの連携機能が多く見受けられ、EC事業者向けサービスという立ち位置に変更はなさそうです。この頃からAPIの整備ができていて、外部ツールとの連携のスピードの早さから技術要件定義から実行までのレベルの高さが伺えます。

また、2015年8月にシリーズBで5億円の資金調達を実施します。このときの導入企業数は600社と発表されています。

ウェブ接客「KARTE」を提供するプレイドが5億円を調達

PR TIMES

【2016年3月~】正式リリース:トップページに料金表示開始

2016年3月時点の料金表示

2016年3月時点でプロフェッショナルプランはなくなりました。

2016年9月時点の料金表示

2016年9月時点でベーシックプランはなくなり、エンタープライズのみになりました。ここで明確にエンタープライズにターゲットをシフトしています。

ちなみにエンタープライズの料金は非表示です。

2016年10月時点の料金表示

翌月の2016年10月にはエンタープライズのみで月額料金98,000円~と明記されるようになりました。

別途料金としてオプション料金の明記もあります。

  • 2月14日 最適なタイミングでレコメンドが可能に — KARTEがシルバーエッグ・テクノロジーのレコメンドサービスと連携開始、UNITED ARROWS LTD. ONLINE STOREが採用
  • 3月17日 サイト外のお客様への接客も可能にする「KARTE TALK」をエンプラから提供開始
  • 6月8日 マーケティングオートメーションツール「カスタマーリングス」と連携開始
  • 8月4日 ナビプラスのレコメンドサービスと連携開始、「@cosme shopping」が採用
  • 9月28日 カスタマーサポート事業を展開するアディッシュと提携 運用代行サービスを提供開始
  • 10月14日 「KARTE」がFacebook メッセンジャーに対応
  • 10月19日 新生銀行が導入
  • 11月9日 くじ引きや診断系コンテンツなどのゲーム要素を簡単に導入可能に
  • 11月24日 ECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」と連携開始
  • 12月2日 「Marketo」と「KARTE」が連携開始〜ビズリーチ、freee、Viibarが導入・活用〜

機能追加の内容に、MAツールとの連携、レコメンドツールとの連携が行われています。

エンタープライズにシフトした2016年は企業あたりの平均単価が対前年547%増の23万円台になり、EC事業者以外の利用顧客が増えました。

  • スタッフ数:17人から30人
  • ARR:3.0億円(対前年687%増)
  • 平均単価:23.2万円/社(対前年547%増)

【2017年8月~】料金表示に変化なし

2017年8月時点の料金表示

サポートに電話がなくなりましたが、エンタープライズ向け料金表示はそのままです。

  • 2月14日 LINE@に対応
  • 4月26日 インテージの生活者見える化ソリューション「Genometrics」と連携開始
  • 5月30日 シルバーエッグ・テクノロジーと連携、ECサイトのカート離脱をサイト内外で防止
  • 7月27日 NRIデジタルと提携し企業のデジタルマーケティング支援を強化
  • 9月7日 マネックス証券が導入
  • 9月26日 資生堂の「ワタシプラス」に導入
  • 12月4日 「KARTE CX CONNECT」の提供を開始

2017年の機能追加でPR TIMESにリリースが出ていた一覧です。

NRIとのデジタルマーケティング支援でエンタープライズへの導入が加速したのでしょうか。

  • スタッフ数:30人から60人
  • ARR:8.1億円(対前年172%増)
  • 平均単価:29.5万円/社(対前年27%増)

【2018年6月~】料金非表示へ

2018年6月時点の表示

2018年5月末に本社GINZA SIXへ移転と共にウェブ接客からCX(顧客体験)プラットフォームへ訴求が変更され、サービスサイトも変わっています。そして、エンタープライズプランの料金表示がなくなりました。

  • 1月25日 Google アナリティクスとデータの相互連携を開始
  • 2月28日 「Salesforce Marketing Cloud」と連携を開始
  • 3月19日 「KARTE for App」を提供開始
  • 3月29日 CXに特化したメディア「XD(クロスディー)」を開始
  • 4月10日 「Yappli」と連携を開始
  • 4月17日 ウェブ接客からCX(顧客体験)プラットフォームへ
  • 4月27日 クラウドセキュリティの国際規格、「ISO/IEC 27017:2015」の認証を取得
  • 6月4日 「STAFF START」と連携を開始
  • 6月19日 「KARTE for App」が「Adjust」と連携を開始
  • 7月10日 「KARTE for App」が「AppsFlyer」と連携を開始
  • 9月4日 「CX DIVE」虎ノ門ヒルズフォーラムにて開催
  • 12月12日 カスタマーサポート特化型AIチャットボット「Karakuri」と連携を開始

2018年の機能追加でPR TIMESにリリースが出ていた一覧です。

アプリへの対応、クラウドセキュリティの国際規格取得よりエンタープライズ企業向けの導入強化が進んでいます。SMBからエンタープライズ向けにシフトする際の機能追加順序の参考になります。

  • スタッフ数:60人から85人
  • ARR:16.0億円(対前年97%増)
  • 平均単価:37.2万円/社(対前年26%増)

【2019年7月~】平均単価186%増

2019年7月時点の表示

サービスサイトTopに大きな変化はありません。

  • 3月1日 「KARTE for LINE」の提供を開始
  • 4月17日 「CX DIVE 2019」開催
  • 4月23日 「レコメンド機能」の提供を開始
  • 7月5日 「KARTE」導入支援の戦略パートナーとしてトランスコスモスとの業務提携
  • 7月9日 Lookerと連携を開始
  • 10月8日 「Amazon Payで決済可能」をお知らせするEC向けポップアップの提供を開始
  • 10月25日 「CX DIVE 2019 AKI」開催
  • 11月19日 「DataRobot」の連携ソリューションを電通デジタルが提供開始
  • 12月16日 「C4M OnBoard with KARTE」の提供を開始
  • 12月18日 KARTEとクアルトリクスが連携を開始

2018年9月より開催されはじめたCX DIVEというリアルイベントは半年毎に開催され、「KARTE」導入支援でトランスコスモス、「DataRobot」の連携ソリューションを電通デジタルが提供開始しています。

また、2019年には外部ツール連携オプションとして下記が追加されています。

  • データベース
  • ETL
  • リサーチ

※ETL:組織の内外に散在するデジタルデータを抽出・収集して変換し、格納先に配信するツール

  • スタッフ数:85人から122人
  • ARR:33.0億円(対前年107%増)
  • 平均単価:69.3万円/社(対前年86%増)

導入社あたりの平均単価が大きく上昇しました。

2020年9月末時点のNRR102.3%と好評されていますが、既存導入企業のアップセルが大きく成功している = 導入企業の売上が上昇している結果であり、すごい顧客体験です。

【2020年10月~】上場

  • 1月22日 KARTEとSlackが連携を開始
  • 1月27日 KARTEと Amazon Connect が機能連携を開始
  • 2月6日 ユーザビリティアンケートが工数レスに実行できる「Usability Scale」を提供開始
  • 4月24日 「いますぐ始めるKARTEオンラインチャット」の提供を開始
  • 6月8日 ECの利用・購入におけるユーザー体験を簡易診断する「Simple CX Survey for EC」 の提供開始
  • 6月22日 スマートフォンアプリのユーザー体験を簡易診断する 『Simple CX Survey for App』の提供を開始
  • 6月25日 「KARTE」と対話エンジン「BEDORE Conversation」が連携開始
  • 7月6日 法人向けSaaSのCX(顧客体験)を簡易診断する「Simple CX Survey for BtoB SaaS」の提供を開始
  • 7月30日 「KARTE Blocks」クローズドβ版で提供開始

ノーコードでページが作成できるKARTE Blocksの提供や外部ツール連携オプションとしてSlack連携がスタートしています。

  • スタッフ数:122人から190人
  • ARR:43.9億円(対前年33%増)
  • 平均単価:77.1万円/社(対前年11%増)

まとめ

KARTEのターゲットと単価の変化
  1. ターゲット:2014年リリースから2.5年後にエンタープライズへ
  2. 料金表示:2018年から料金を非表示へ
  3. 平均単価:2017年より毎年対前年37.6%増
  4. ARR:サービス開始4年で3.0億円、6年で16.0億円
KARTEのARPU推移
KARTEの1社あたりの平均単価推移
KARTEの機能と推移

サービスリリース当時から外部連携のスピードには驚きました。API整備から外部パートナーとの連携コミュニケーション能力の高さが伺えます。

そして、KARTEを通して着実にクライアントの売上に貢献しているからこそ、NRR100%以上になっています。

※過去のWebページ画面キャプチャはInternet Archiveより取得

※公開情報や過去のHP情報より類推して記事を作成